○鹿児島市言語としての手話への理解の促進及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例

令和6年3月18日

条例第5号

手話は、音声言語である日本語とは異なり、独自の文法体系を持ち、手指の動きや表情等により視覚的に表現する言語である。手話は、ろう者のコミュニケーションにとって必要不可欠なものであるが、長きにわたり手話が言語として認められてこなかったことや、手話を使用することができる環境が十分に整えられてこなかったことなどから、ろう者は、必要な情報を得ることやコミュニケーションを図ることが難しく、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。こうした中で、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話は言語として位置付けられたが、手話に対する理解は十分には進んでいない現状である。

また、手話、要約筆記、点字などの障害の特性に応じたコミュニケーション手段への理解や普及も十分には進んでおらず、日常生活や社会生活を営む上で、不便や不安を感じている人は少なくない。このような状況の中、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律が施行され、全ての障害者が必要な情報を取得し、相互理解を深めることができる環境を整備することがより一層求められている。

鹿児島市は、思いやりや連帯感を培った郷中教育が郷土の偉人を育んできた歴史を持つ。その温かみにあふれる市民性や支え合い、助け合いを大事にする風土を生かし、やさしさや温もりに満ちたまちづくりを推進する必要がある。

これらを踏まえ、言語としての手話への理解の促進及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進を図ることにより、社会的障壁を除去し、障害の有無にかかわらず、全ての市民が相互に人格と個性を尊重し支え合う社会の実現を目指して、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、言語としての手話への理解の促進及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進について基本理念を定め、市の責務並びに市民等及び事業者の役割を明らかにするとともに、市が推進する施策の基本的事項を定めることにより、障害の有無にかかわらず、全ての市民が相互に人格と個性を尊重し支え合う社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病その他の心身の機能の障害(以下「障害」という。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

(2) 社会的障壁 障害者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

(3) 障害の特性に応じたコミュニケーション手段 手話、要約筆記、点字、音声、筆談、触手話、拡大文字、絵図、平易な表現、情報通信技術機器その他障害の特性に応じて利用される情報及び意思の多様な伝達手段をいう。

(4) 意思疎通支援者 手話通訳者、要約筆記者、点訳者、音訳者(朗読者を含む。)、盲ろう者向け通訳・介助員その他の障害者の意思疎通の支援を行う者をいう。

(5) 市民等 市内に居住し、通勤し、又は通学する者及び市内で活動する団体をいう。

(6) 事業者 市内に事業所又は事務所を有し、事業を営む個人又は法人その他の団体をいう。

(基本理念)

第3条 言語としての手話への理解の促進及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進は、障害の有無にかかわらず、全ての市民が相互に人格と個性を尊重し支え合うことが重要であるとの認識の下に行われなければならない。

2 言語としての手話への理解の促進は、手話が独自の文法体系を有する言語であって、ろう者が日常生活及び社会生活を営むために大切に受け継いできた文化的所産であるとの認識の下に行われなければならない。

3 障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進は、障害者の自立した日常生活及び社会生活を確保する上で重要であることから、その選択の機会の確保及び利用の機会の拡大が図られることを基本として行われなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、言語としての手話への理解の促進及び手話の普及を図るとともに、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進しなければならない。

(市民等の役割)

第5条 市民等は、基本理念に対する理解を深め、前条の規定により市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、第4条の規定により市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

2 事業者は、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の活用により、障害者が利用しやすいサービスの提供及び働きやすい環境の整備に努めるものとする。

(連携及び協働)

第7条 市、市民等及び事業者は、第4条から前条までに規定する責務又は役割を踏まえ、国及び他の地方公共団体を含め、相互に連携し、及び協働するよう努めるものとする。

(施策の推進)

第8条 市は、第4条に規定する責務を果たすため、次に掲げる施策を推進するものとする。

(1) 言語としての手話への理解の促進

(2) 障害の特性に応じたコミュニケーション手段の普及

(3) 障害の特性に応じたコミュニケーション手段を選択でき、利用しやすい環境の整備

(4) 障害の特性に応じたコミュニケーション手段による情報発信及び情報提供(災害その他非常事態の場合を含む。)

(5) 意思疎通支援者の確保及び養成

(6) 前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策

2 市は、前項に掲げる施策を推進するに当たり必要があると認めるときは、障害者その他関係者から意見を聴取するものとする。

3 市は、第1項各号に掲げる施策の実施状況について、障害者関係団体等で構成する協議会の点検及び評価を受けるものとする。

(委任)

第9条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

この条例は、令和6年4月1日から施行する。

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令和6年3月18日 条例第5号

(令和6年4月1日施行)