○鹿児島市こどもの未来応援条例

令和5年3月20日

条例第4号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第3条)

第2章 市の責務及び保護者等の役割(第4条―第9条)

第3章 こどもの健やかな育ちを支える取組(第10条―第19条)

付則

こどもは、一人一人が様々な個性や能力、大いなる可能性を持ったかけがえのない存在です。

こどもは、本来、おとなと同様に権利の主体として尊重され、基本的人権が保障されるとともに、成長の過程にあることから、こどもにとって最善の利益が尊重される中で、生きる、育つ、守られる、参加するなどのこどもの権利が保障されなければなりません。

近年、少子化、家族の多様化、地域のつながりの希薄化などこどもを取り巻く環境は大きく変化し、児童虐待や貧困、いじめ、不登校、ヤングケアラーなどこどもをめぐる様々な課題が生じており、これらは、こどもの人権と深く関わっています。

こどもは、いろいろな経験を重ね、多様な人々とかかわる中で、豊かな人間性を育み、自分を大切にする心、他者を尊重する心や社会性を養い成長していきます。おとなは、こどもを独立した権利の主体として尊重し、その思いを受けとめるとともに、愛情を持って寄り添い、自立に向けて成長を支えていく必要があります。

鹿児島市では、これまでも地域でこどもを大切に育んできており、次代を担うこどもが、こどもらしく今を幸せに生き、夢や希望を抱きながら、心身ともに健やかに成長することは、時代を超えた私たちの切なる願いです。

私たちは、日本国憲法をはじめ、児童の権利に関する条約やこども基本法等の趣旨を踏まえ、全てのこどもが生まれながらに持っている権利が最大限尊重され、その成長を社会全体で相互に連携、協働して支えることにより、生まれ育った環境にかかわらず、全てのこどもが健やかに成長し、将来にわたって夢や希望を持てるまちの実現を目指し、条例を制定します。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、こどもの健やかな育ちの推進に関し、基本理念を定め、市の責務並びに保護者、育ち学ぶ施設、市民、地域及び事業者(以下「保護者等」という。)の役割を明らかにするとともに、こども施策を総合的かつ継続的に推進するための基本となる事項を定めることにより、全てのこどもが健やかに成長し、将来にわたって夢や希望を持てるまちを実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) こども 18歳未満の者その他当該者と等しく権利を認めることが適当と認められる者をいう。

(2) 保護者 親権を行う者、未成年後見人その他の者で、こどもを現に監護するものをいう。

(3) 育ち学ぶ施設 児童福祉法(昭和22年法律第164号)第7条第1項に規定する児童福祉施設、学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校、社会教育に関する施設、医療機関その他こどもの育ち、学び及び支援を目的として、こどもが通学し、通園し、通所し、利用し、入所し、又は相談する施設をいう。

(4) 市民 市内に居住し、通勤し、又は通学する者(こどもを除く。)をいう。

(5) 地域 町内会、地域コミュニティ協議会、社会福祉協議会、民生委員、児童委員、人権擁護委員、ボランティア団体、特定非営利活動法人その他の市内で活動を行う非営利の団体等をいう。

(6) 事業者 市内に事業所又は事務所を有し、事業を営む個人又は法人その他の団体をいう。

(7) こども施策 こども基本法(令和4年法律第77号)第2条第2項に規定するこども施策をいう。

(基本理念)

第3条 こどもの健やかな育ちは、次に掲げる基本理念(以下「基本理念」という。)に基づいて推進されなければならない。

(1) 日本国憲法、児童の権利に関する条約、こども基本法等の理念に基づき、こどもを権利の主体として尊重することを、全ての取組の基礎とすること。

(2) こどもにかかわることを決める場合は、こどもの成長及び発達の程度に応じ、こどもの意見を尊重するなどこどもの視点に立ち、こどもの最善の利益を第一に考慮すること。

(3) おとなと共に社会を構成し、今の社会を生きる一員及び未来の社会の担い手として、こどもが主体的に社会に参加することのできる環境を整備すること。

(4) 市の責務及び保護者等の役割に応じて自主的かつ主体的に取り組むとともに、相互に連携し、及び協力することにより、こどもの健やかな育ちを支え合うこと。

(5) 全てのこどもの声や願いが届き、多様性が尊重され、自分らしく生きることや、自分の可能性を伸ばすことができるまちづくりを進めることは、こどもだけでなく、鹿児島市に住む又は鹿児島市を訪れる全ての人にとって優しいまちづくりにつながるという認識の下に、福祉、医療、保健、教育及び地域づくりといった、あらゆる分野がつながりを深め、総合的な取組がなされること。

第2章 市の責務及び保護者等の役割

(市の責務)

第4条 市は、基本理念にのっとり、こども施策を総合的かつ計画的に推進しなければならない。

2 市は、こども施策の推進に当たっては、保護者等と協働するよう努めるとともに、国及び他の地方公共団体と連携して取り組まなければならない。

3 市は、保護者等がその役割を果たすことができるよう、必要に応じて支援し、相互に連携が図られるよう調整を行わなければならない。

4 市は、こども施策の幅広い展開及び一層の充実を図るため、必要な体制を整備するとともに、財政上の措置を講ずるよう努めなければならない。

(保護者の役割)

第5条 保護者は、こどもの養育及び発達についての第一義的な責任があることを認識するとともに、困ったときは1人で不安等を抱え込まず、必要な協力を周囲から得て、基本理念にのっとり、次に掲げる役割を果たすよう努めるものとする。

(1) こどもが心身ともに安らかに過ごすとともに、健やかに育つ家庭環境づくりを行うこと。

(2) 乳幼児期からこどもの人格を認め、自分を大切にする気持ちを育むとともに、こどもの成長及び発達の程度に応じ、基本的な生活習慣、他者を尊重する心、豊かな人間性、社会性等を身に付けることができるよう支援すること。

(育ち学ぶ施設の役割)

第6条 育ち学ぶ施設は、こどもの健やかな育ちにとって重要な役割を果たす場であることを認識し、基本理念にのっとり、次に掲げる役割を果たすよう努めるものとする。

(1) こどもの成長及び発達の程度に応じ、こどもが主体的に考え、学び、行動する力を身に付けることができるよう支え、こどもの意見を尊重し、こどもと共に語り、考える機会を確保すること。

(2) 集団生活を通じ、豊かな人間性及び社会性を身に付けることができるよう、必要な支援を行うこと。

(3) 施設等におけるこどもの安全を確保し、こどもが安心して過ごすことができる場にするとともに、こどもに関する課題に早期に気付き、必要な支援を行うこと。

(市民の役割)

第7条 市民は、基本理念にのっとり、こどもへの支援の重要性について関心及び理解を深めるとともに、地域活動等を通して、こどもの健やかな育ちを支えるよう努めるものとする。

(地域の役割)

第8条 地域は、社会全体で子育てをするという意識を持ち、基本理念にのっとり、次に掲げる役割を果たすよう努めるものとする。

(1) 地域が、こどもの豊かな人間性及び社会性を育む場であることを認識し、こどもが安全で安心して遊び、学ぶことができる良好な環境づくりを行うこと。

(2) 住民間の交流、見守り活動等を通して、こどもが健やかに育ち、保護者や家庭が安心して子育てをすることができる地域づくりを行うこと。

(3) 地域における取組において、こどもがこども同士又は多様な世代と交流し、様々な体験をすることができる機会の提供を行うこと。

(事業者の役割)

第9条 事業者は、事業活動を行うに当たり、こどもの権利を尊重するとともに、社会的影響力及び社会的責任を認識し、基本理念にのっとり、次に掲げる役割を果たすよう努めるものとする。

(1) 雇用する労働者が安心してこどもを生み、育てることができるよう、子育てに関する理解を深めるとともに、仕事と生活の調和に必要な環境の整備を行うこと。

(2) 市、保護者、育ち学ぶ施設及び地域が行うこどもの育成に関する諸活動又はこどもの主体的な活動への協力を行うとともに、こどもが社会の仕組み及び生き方に対する理解を深めるための機会の提供を行うこと。

(3) 所有し、又は管理する施設におけるこどもの安全及び利便性の確保に配慮すること。

第3章 こどもの健やかな育ちを支える取組

(こどもの意見表明及び社会参加)

第10条 市及び保護者等は、こどもが社会の一員として自分の考えや意見を表明するなどの社会に参加する機会を設けるよう努めるものとする。

2 市及び保護者等は、こどもの社会参加を保障するため、こどもの考えや意見を尊重するとともに、こどもの主体的な社会活動の支援に努め、自らが行うこどもへの支援に関する施策、取組等について、こども自身が理解を深められるよう、こどもの視点に立った情報及び学ぶ機会の提供を行うものとする。

(安全、安心な環境の整備等)

第11条 市及び保護者等は、こどもを犯罪、事故、災害の被害その他こどもを取り巻く有害及び危険な環境から守る取組の推進により、こどもが健やかに成長することができ、安全で安心して暮らすことができる環境づくりに努めるものとする。

2 市及び保護者等は、鹿児島の豊かな自然、文化芸術等がこどもの育ちを支えるために大切であることを認識し、こどもと共に、その環境を守り育てるよう努めるものとする。

(こどもの居場所づくり)

第12条 市及び保護者等は、こどもが安心して過ごすことができるとともに、自然、文化芸術等との触れ合い、遊びその他の体験又は年齢の異なるこどもや地域住民との交流を通して、豊かな人間性を育むことができるこどもの居場所づくりに努めるものとする。

(子育て家庭への支援等)

第13条 市、育ち学ぶ施設、地域及び事業者は、保護者が安心して子育てをすることができるよう、保護者に対し必要な支援を行うとともに、子育てしやすい環境づくりに努めるものとする。

2 市、育ち学ぶ施設、地域及び事業者は、ひとり親家庭をはじめとする様々な子育て家庭に対し、その状況に応じた適切な支援を行うよう努めるものとする。

(育ち学ぶ施設の職員等への支援等)

第14条 市並びに育ち学ぶ施設の設置者及び管理者は、当該育ち学ぶ施設の職員等がこどもの権利を尊重し、こどもの健やかな育ちの推進に取り組むことができるよう、必要な支援に努めるものとする。

2 育ち学ぶ施設の設置者及び管理者は、保護者、市民及び地域に対して、施設運営の情報提供を行い、互いに連携し、及び協働して、当該育ち学ぶ施設を運営するよう努めるものとする。

(こどもの状況に応じた支援)

第15条 市及び育ち学ぶ施設は、こどもに対する差別、虐待、いじめ、体罰その他の身体的又は精神的暴力の予防、防止及び早期発見に努めるとともに、個別に支援が必要であると考えられるこどもに対しては、そのこどもの状況に応じ、こどもの意思を尊重し、こどもの最善の利益が優先された適切な支援を行うものとする。

(相談機能の充実等)

第16条 市は、こどもからの相談及びこどもについての相談に対し、関係機関と連携し、速やかに対応するとともに、相談内容に応じ、相談者に対し必要な支援を行うものとする。

2 市は、相談者が安心して相談することができるよう、こどもの視点での多様な相談機会の確保及び相談機能の充実に努めるものとする。

3 市は、市及び関係機関の相談窓口等の周知を図るものとする。

(広報及び啓発)

第17条 市は、この条例及びこども施策の内容について、こども及びおとなが理解を深めることができるよう、広報及び啓発を行うものとする。

(調査、情報収集等)

第18条 市は、こども施策を推進するため、必要な調査、情報収集等を行い、得られた情報については、必要に応じて公表するものとする。

(計画の策定等)

第19条 市は、こども施策を推進するため、こども基本法第10条第2項に規定する計画を策定するものとする。

2 この条例の運用状況及びこども施策の実施状況について、鹿児島市子ども・子育て会議条例(平成25年条例第7号)第1条に規定する鹿児島市子ども・子育て会議において定期的に検証するものとする。

この条例は、令和5年5月5日から施行する。

鹿児島市こどもの未来応援条例

令和5年3月20日 条例第4号

(令和5年5月5日施行)